自己実現とか、会社を利用したスキルアップについて考える前に、そもそも「会社とは何か?」という本質的な問題に対して、自分なりの回答を出しておく必要があると思う。
あなた自身が考える「あなたにとっての会社」と、あなたの上司や同僚など周囲の人が考える「会社」のイメージがズレていればいるほど、あなたはストレスを感じるはずだ。
それでも自分を曲げずに、自分なりの生き方を貫こうとすれば、周囲が抱く「会社」イメージとのギャップを上手に埋めるだけの演技力(?)を身につけなければならないだろう。さもないと、そもそも会社の中にいることすら、難しくなってしまう。
「あなたにとっての会社」がそのままでは、会社や職場にとって受け入れられない場合、たとえば「あと2年で会社を辞めるつもりで、それまでに今後役に立ちそうなプロジェクトに参加したいし、資格を取得するための費用の会社に出してほしい」みたいな場合は、周囲とうまくやっていく方法は、いくつかあると思う。
たとえば…
自分が本当はしたい仕事や取得したい資格があるが、それが現在担当している業務とはかけ離れていて、仕事をしていることがムダに感じられるような場合…
- 自分が望む内容の仕事をしている部署への異動を希望する
- 今の部署にい続けながら、自分がしたい仕事やプロジェクトを新しく作ってしまう
というような方法があるだろう。
1) 部署異動を希望する場合、ある程度の準備期間が必要だ。会社にもよるが、もし仮にあなたが異動したい部署を自分で見つけられたとしても、あなたの都合で勝手に異動の申し出を出せる可能性は少ないだろう。
人事異動に際しては、上司を経由して相手先の部署に連絡してもらうことになるはずだ。たとえあなたが望まないにせよ、現在おこなっている業務によって、あなたの上司は会社に評価されているわけなので、もしあなたが抜けたなら、その穴を誰かが埋めなければならない。今いる人員でカバーするにせよ、他の部署から新しく誰かを連れてくるにせよ、あなたが現在イヤイヤおこなっている仕事を引継ぎするためには時間が必要になる。
もし本気で部署異動したいと思うなら、上司や人事部に相談する前に、今あなたが担当している業務を、今の部署の誰かと共有したり、あるいは仕事の手順をマニュアルにまとめておくといった準備をしておくと、あとで異動が決まった時に引継ぎ作業などで昔の仕事や部署にいつまでも拘束されずに、新しい環境や仕事に集中できるようになるだろう。
会社によっては上司を通さず、人事部が直接、異動希望を受け付ける仕組みを準備しているところもある。
その場合、「xxのスキルや業務経験を持っている人材がほしい」みたいに、受入れ先の部署が必要な人材の条件をあらかじめ出した上で募集していて、そこに合う人が何人も応募する、という「コンペ」みたいなことになるケースが多い。
仮にその部署の仕事が、あなたが身につけたいと思っているスキルや経験にピッタリ合っていたとしても、あなたと同じようにその部署に異動したいと思っている人が大勢いたとしたら、あなたはその候補者たちに競り勝って「あなたが最も期待されている人材に近い」と受入れ先の部署に認めてもらう必要がある。
こういった保有スキルなどの条件が指定されている異動募集案件の場合、もしあなたが現在、その条件を持っていなければ、そもそも候補者になることもできないことになる。その場合、どうしてもその部署や業務にこだわるなら、まず今いる部署で何とかその異動条件を満たすように準備することになる。
以上のような、他部署に異動することで、自分が必要とするスキルや経験を身につけようとする「ハードランディング」な方法に対して、時間はかかるかもしれないが、もっとソフトで周囲にも禍根(?)を残さない方法もある。それが…
2) 今いる部署で担当業務を変える、あるいは追加する方法である。
上司にしてみれば、部下が異動を申し出るということは、人事評価上は「部下をマネジメントする能力に問題があるのでは?」という疑いをかけられかねないので、望ましいものではない。
それに比べて「もっとおもしろい仕事もやらせてください」と言われれば、あなたは、いかにもやる気があるように見えるだろう。上司も喜ぶに違いない。もちろん、今抱えている仕事をないがしろにしてはダメだが。
会社というのは、基本的には上意下達のシステムなので、黙っていればその部署に課せられた仕事が上から降りてきて、部下に割り当てられる。黙って待っていたら、当然だがあなたが望むような仕事が運よくアサインされる可能性は低い。運が悪ければ、上司と仲が悪かったり、他にもっと出来がいい部下に仕事を取られたりして、干されてしまうかもしれない。
もしこうなってしまうと、上司やライバルとの間で、仕事そのもの以外に余計なストレスを抱えなければならなくなる。
こうした状況を避けるには「替えが効かない」仕事、あなたにしか出来ない仕事を、自分でつくってしまうという手がある。
もちろん、その仕事はあなたの単なるひとりよがりでなく、上司や職場がきちんと存在価値を認める必要がある。
また、どんなにその仕事の価値を認められようとも、その仕事をおこなうことが、あなたの望むスキルアップや身になる経験につながらなければ意味はない。
景気が悪くなってくると、しばしば「生き残り」が目的のようになってしまう。
しかし、あなたが会社で働く真の目的は、自己実現に向けて将来必要になるスキルや体験を手に入れることだったはずだ。
居場所がなくなることを恐れて、今の部署にしがみつくだけになってしまって、目的を見失ってはいけない。
そもそも居場所がなくなるのは、
– あなたの仕事が、誰か他の人でも代行できる
– あなたが担当している仕事が、あなたの部署にとって重要な価値がない
かのいずれかの場合だ。
だから、ただ単に「自分がやりたいから」という自分目線以外に、「この仕事は部署にとって価値がある」と思われるような仕事を見つけるだけの客観的な視点が必要だ。
- あなたでなければできない仕事
- あなたの部署が価値を認める仕事
- あなたが身につけたいスキルや体験を提供してくれる仕事
という3つの要素の集合を考えたときに、そのすべてが重なる部分に、あなたが進むべき道があるはずだ。
ところで、当たり前のことだが、なかなか自分の思い通りの仕事を手に入れるのは難しいはずだ。すでに書いたとおり、会社は基本的に上意下達のシステムである。だから、あなた起点の意志や判断は、上司や部署が「お墨付き」を与えてくれるまでは、あなたが勝手に「暴走」していると評価されてしまう。
面倒なことだが、たとえあなたが見つけ出し、すべての準備をお膳立てした企画だとしても、あたかも上司のおかげでその仕事が成り立ったかのように、周囲には見せてあげる必要がある。これが会社がいストレスを生む大きな原因のひとつだと思うが、まあそういうルールのゲームなので仕方ない。
あなた自身のアイデアで、新しい仕事やプロジェクトをはじめるときには、きちんと上司に話を通して、必要に応じて随時、説明や報告などをして状況を共有して「当事者意識」を持たせておこう。その仕事での成果がきちんと評価につながるように、上司とネゴっておかないと、望みどおりにスキルアップできても社内評価につながらず、感情的に納得できない結果になって、モチベーションが下がってしまう。
数年単位の「キャリアプラン」をつくって、それを上司に納得させてしまえば、上司もあなたが望むスキルアップを目指す協力をしてくれるかもしれない。
ただ「キャリアプラン」には当然、不足の事態が発声した場合、たとえば…
- 「今の部署から異動した場合」とか
- 「転職した場合」
- 「スピンアウトして、自分で会社を立ち上げた場合」
みたいな、上司と共有できないプランも考えておかなければならない。
この記事へのコメントはありません。